眩暈を起こしそうな、予感がしている。
今はまだ、かろうじて安定を保っている世界が、もうすぐ回り出しそうな感じが。
嫌な気分だ。きもちわるい。

きっと起こる、とわかっても、それが決して回避できない問題ならば、そんなのは予測できない方が良い。
「回避を望む場合は、だろ?」
「…僕が望んでいないとでも?」
「回避を望んでいるのなら、俺のところになんて来ない。違うか?」
「それは」

貴方からは来てくれないから。

などとは言えなくて、口を噤む。
視線を床に落とせば、彼がふっと笑った。
「そんな顔をするなよ。俺が拒んでるわけじゃない。ましてや責めることなんて、できやしないさ。理由もない」
「理由なら」
あるはずだ、と言おうとするのを彼は遮った。物理的に。長い指を僕の唇に押し当てて。
「ティエリア」
「っ……」
ただ名前を呼ばれただけなのに、どうしようもなく心が震える。
ああ、ほらやっぱり。
回避なんて、出来ないのだ。
「だから」
気付けば彼は至近距離で笑っていた。
「回避なんてする気がないんだろ?」
そうだ、わかっている。
ここにいるのは僕の意思。誰に無理強いされたわけでもない。むしろ僕の我儘と言った方が正しいくらいで。
だから。
「自業自得、ですね」

ああ、ほらやっぱり。
眩暈、が。
そうだ、わかっている。
回避なんてする気はない。
ここにいるのは僕の意思。誰に無理強いされたわけでもない。
ここに。
彼の、腕の中に。


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