上中下



「空は、見上げるものだと思っていた」
空を仰ぎながら、ぽつりと刹那が言った。
珍しいな、と思いながらロックオンはそれを聞く。刹那が自分からこんなふうに語りだすことは、あまりない。
上を向くその澄んだ視線は、一体何を見ているのだろうか。
「見上げるものだと…、思っていたんだ」
たぶん、過去と未来を同時に見ている。
「今は、違うのか」
自分に向けられた言葉かどうか怪しかったが、それでもロックオンは問わずにはいられなかった。
知りたい、ということではなくて、知っておかなければならないような気がして。
(……言い訳に聞こえる、かな)
「今は…、空の中にいるから」
──エクシアに乗って。
「見上げていたはずの空の中に、いるんだ」
そのことに戸惑っているのだ、きっと。
空の下と、空の中。
どちらの方がより広く感じられる?
そう問う代わりに。
「どっちがいい?」
「?」
「空の下にいるのと、空の中にいるのと。……どっちにいたい」
「……………………わからない。でも」
刹那は一度俯いて、それから。
「空の上にはいたくない」
きっぱり言い放つと、ロックオンを真っ直ぐ見た。
「……そうか」
ロックオンは微笑んで、一度だけ、ぽんと手を頭に置いた。
「時間だ。行くぞ」
「ああ」


空の中で、ミッションだ。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送