熱伝導



どうしようもなく、不安なとき。
原因も理由も結末もわからず誰にも説明のできない。それでいて誰もが経験したことのあるであろう不安。
有効な治癒方法を知る者はなく、もちろん特効薬もない。
さあ、どうやってこのアンバランスな時間をやり過ごそう?

緩やかな音楽。
温かなミルク。
楽しい思い出。

それでも、ダメなら……?

ただ一人、自分の肩を自分で抱いてアレルヤは浅く呼吸を繰り返した。
自分の腕を、自分の掌で撫ぜる。
じわじわと身体に沁みてゆくぬくもり。けれどこれはそもそもが自分自身の熱。
もともと己の内に有している熱を、己に与えるという、なんとも滑稽な行為。
けれども。

アレルヤ。

自分で自分の名を呼んで、安定を促す。

アレルヤ。

けれども、なぜだろう。
確かに他人の熱をもらっているような、温められているような気がするのは。
確かに他人に名を呼んでもらっているような、傍にいてもらえているような気がするのは。



「アレルヤ」



ああ、ほら、ねえ。
今、確かに君が。


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