繋いだ手はバニラの香り──1



キキキキキーーーィッ!!
甲高い、ブレーキの音。それに続いて、凄まじい破壊音。
ガギャアァアン、ドォオオ……!!
(え…、なんだ…?一体、何が起こっている…?)
──きゃああ、なぁに、事故?
──誰か救急車!警察もだ!
(あれは、父さん…?)
──ひっでぇなぁ…、こりゃあ即死だぞ…。助からねぇよ…。
──あの車、急に突っ込んでいったのよ、壁に。飲酒運転かしら…、いやぁねぇ…。
(嘘だ…)
──ちょっと!子供が乗ってるじゃないの!
──可哀想に…!え?あれはもしかしてストラトスさんじゃ…。

嘘だぁああああっ!!!!

「っ!」
がばり。
跳ね起きて、ロックオンはそれが夢であったことに気付いた。汗でTシャツが張り付いており、気分が悪いことこの上ない。最悪な目覚めだ。
(ったく…、いつまで夢に見りゃ気が済むんだ俺は)
その答えはすでに出ているのだが、それでも苦い思いは消えない。
はあ、と溜息をついて、ロックオンはベッドを降りた。ぐっしょり濡れているTシャツを脱ぎ捨て、短パンだけの姿でキッチンへ向う。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを掴み取って一息に飲んだ。ひどく、喉が渇いていた。
コーヒーを淹れるためにヤカンを火にかけてから新聞を広げると、海開きの日程が発表されていた。まだまだ先だと思っていたのに、いつの間にか夏はすぐ傍まで来ていたようだ。
(楽しい夏になるはずだった、あの年も)
夏休みに海に行く計画を立てて、何ヶ月も前から楽しみにしていたのだ。あの小さな妹は。
「……っ、」
名前を呼びそうになってロックオンは思わず口元を押さえた。ダメだ、今日は異常に過敏になっている。昨日上司からあった連絡の所為だとは思うが。

ロックオンは、家族を十年前に交通事故で失った。一度に、目の前で。

それがただの交通事故ではないと知ったのが、六年前。そして。
「ロックオン。あなたの探している相手が見つかったわ」
上司であるスメラギ・李・ノリエガからそう連絡があったのが、つい昨日。

(始まる──ようやく俺の戦いが)
じっとしていられない気分で、ロックオンは手早く着替えるとコンロの火を消した。玄関へ向う途中、愛車のキーをつかもうとして…、結局やめた。


TO BE

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