Circulation


性描写ありですのでご注意ください。自己責任でお願いします。






その一言で、世界が変わった。


理性が吹き飛ぶ瞬間を、いつも覚えていない。眠りに落ちる瞬間を覚えていたことがないのと同じように。
苦しいくらいの熱を生み、与えられる全ての愛撫に反応するほどに身体は敏感になっているのに、意識は朦朧としていて麻酔を打たれたかのように痺れていた。
「あぁ……」
はしたなくも満足げに漏れた声が熱い。
穿たれ、抉られ、揺さぶられ、とっくに燃え尽きていてもおかしくない最奥にまた火が灯る。
「ひぁ、あ、あ、あっ」
摺り寄せ、引き寄せ、吸い寄せ、暴走する心身を止められない。

この悦びを最初に教えてくれたのは彼だった。
でも今、この悦びを自分と分け合っているのは彼ではない。

(ダメだ、違う、そんなこと)

警告が、かすかに響く。
そんなことを考えたいのではないのに、



背筋を辿り、降りてゆく手のひらに、
(ああ、彼もこんなふうに)


目尻に滲む涙を、掬うように吸い取る唇に、
(ああ、こんなふうにして欲しかった)



降りてきた手のひらが、左の太腿を指先でなぞって、
(ああ、くる…)


予感を裏切らず深く貫かれる。
「あああーーーーっっっ!!!」
掠れた声が喉から迸った。
「っ、」
熱い息が耳元で呻くのが聞こえる。



ああ。


ああ。


ああ。


今、この瞬間、


ああ。


ああ。


同じ電流を感じている。


ああ。


ああ。


ああ。





「ロックオン……」





ああ。





「あ……」
己の犯した過ちに気付いて色をなくすティエリアの、理性をその身に取り戻させまいとするかのように、刹那は激しく動いた。
「ひぁあああっ、せつな……、刹那っ」
ティエリアは、自分と繋がっている男の名前を、今度は正しく呼んで、爪を立てんばかりにその背にしがみつく。
「ティエリア」
刹那は、自分と繋がっている男の名前を、一度だけゆっくりと読んで、あやすようにその背を撫でる。
「刹那、刹那、刹那ぁ…ん」



ああ。


ああ。


ああ。



「刹那、せつ、な…、刹那……」


ティエリアは一晩中、壊れたように刹那の名を呼び続けた。


  





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